作品は、再演を重ねることで磨かれ、社会の中で繰り返し聞かれることにより、その真価を徐々にあらわす。作品はかさねて演奏をされなければならない。<br>
ブラームスの交響曲第二番は名曲中の名曲で、どれほどの名指揮者や迷指揮者たちが洋の東西を問わずに幾多のオーケストラを指揮してきたことだろう。<br>
一方、芥川也寸志の交響曲を振った指揮者は、作曲者(1954年東京交響楽団、1986年新交響楽団)のほか上田仁(1955年東京交響楽団)、佐藤功太郎(1980年東京交響楽団)、山田一雄(1990年新交響楽団)、岩城宏之(1990年新日本フィルハーモニー交響楽団)*、飯守泰次郎(1999年新交響楽団)、本名徹次(2005年芦屋交響楽団)くらいであろうか。芥川の作品の演奏の歴史は未成熟であり、これまでの実演や録音では絶妙なオーケストレーションが一部の楽器の強奏によってかき消されることが多く、残念ながら精緻に書かれたオーケストラ・スコアから見れば、的確に再現されてきたとは言えない。<br>
ブリュッヘン率いる18世紀オーケストラや、シギスヴァルト・クイケン率いるラ・プティット・バンド、名門バッハ・コレギウム・ジャパンで古典音楽アンサンブルの神髄を極めた鈴木秀美が指揮者としてロマン派の巨匠ブラームスに挑み、日本の管弦楽作品のスコアを読み解く。
*1990年3月13日(東京文化会館)14日(オーチャードホール)の演奏記録について、@nob_maz氏よりご教示いただきました。