山田和男やまだ かずお (1912-1991)
「第13回演奏会プログラム解説より転載」
奥平 一(オーケストラ・ニッポニカ)
松平頼則の作品と同じく、国民詩曲としてNHKから委嘱された作品である。山田和男はその頃の心情を自伝の中で次のように述べている。
『「交響的木曾」は、明るく、絢爛たる曲になった。東北の庄内平野に伝わる民謡を配した。日本的メロディの前奏曲から始まり、そして一挙に山国の木曾へと展開してゆく大管弦楽曲 ――。以前から、わたしは、迫力に満ちたスケールの大きい曲を書いてみたいと思っていたのだ。 かの「木曾節」も、もちろん採り入れた。しかし、日本の民謡は、それ自体の完成度が非常に高いために、これをモディファイしたりヴァリエーションをつけて、西洋的なオーケストラの空間に広げるのは、なかなか大変な仕事である。下手をすれば、変に中途半端でぶざまなものになりかねない。 さらには、日本民謡は、おおかたもの悲しげだ。「木曾節」も、一部そういえるだろう。が、絢爛となりうる要素もふんだんにある。大きな曲を書きたい――、と何年か暖めてきた構想が一挙に爆発したかのように、わたしは、“わたしの木曾”のイメージを、オーケストラの宇宙空間に広げていった。』(山田一雄「一音百態」音楽之友社1992年より引用) しかし、作曲家はその後に、この曲の原譜は戦時中、上海のオーケストラに送った後、紛失してしまったと書いている。その後、NHKのライブラリーから発見されて、1992年に外山雄三指揮による仙台フィルの定期演奏会で50年振りに舞台初演された。 作曲者による説明を少し補ってみる。曲は二部に分かれていて、作曲者自身の指定により第一部(田園曲“おばこ”)と第二部(交響的“木曾節”)をそれぞれ独立して演奏することが可能になっている。 第一部は、「庄内おばこ」がかなり自由にモディファイされて用いられている。第一部の曲想の中には既に木曾節のリズム動機が現れる。第二部は、小太鼓とヴィオラに刻まれる特異なリズムに始まる序奏が終わると、オーボエによって俗謡「農兵(ノーエ)節」が奏され、その後すぐに「木曾節」が始まる。最後は、「ノーエ節」と「木曾節」が対位法的に華やかに演奏されて盛大に終わる。
【楽器編成】Pic、Fl2、Ob2、C-Ang、Cl2(II B-Cl)、Alt-Sax、Fg2、C-Fg、Hr4、Tp3、Tb3、Tub、Tim、Xylophone、Triangle、Tambourine、Grosse
Trommel、Holz Trommel、Kleine Trommel、Cymbals、Celesta、Piano、弦楽5部
【初演】1940(昭和15)年1 月26 日 放送初演 指揮:山田和男 演奏:新交響楽団(現・NHK 交響楽団)
【楽譜出典】スコア(山田御秩子氏 提供)パート譜(民音音楽ライブラリー 提供)
|
作曲家
|