舞台はニホンザル一族の王国。だれよりも美しくだれよりも賢い女王ザルは、じぶんの美しさも権力も永遠のものにしたい、と強く願っている。家来のサルたちも、サルの民衆も、みな女王のいいなり。そこへ、権力と民衆たちの真のすがたを見抜いて描きつくそうとする、一匹の絵かきザル「スキトオリメ」が登場して…。
〔以下の舞台写真はすべて オーケストラ・ニッポニカ第34回演奏会《間宮芳生90歳記念》(2019/1/27 すみだトリフォニーホール、指揮:野平一郎/演出:田尾下哲/衣裳:萩野緑/照明:西田俊郎)で撮影されたものです(写真:澁谷学)〕
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あらすじ…
プロローグ「年輪の秘密」
くすの木の木株になにやら秘密がかくされていることに気付いた「男」に、くすの木は「イヌよりもサルが強かった時代」について語り始める。
第1景「森の肖像画コンテスト」
ニホンザル王国の森で、女王ザルを描いた肖像画のコンテストが行われている。女王ザルはどの絵も気に入らない。家来のオトモザルは、「サルの美しさ」とコンテストの意図について、改めて絵かきザルたちに問いかける。まず、絵かきザル「ソノトオリメ」が答える。
すると、もう1匹の絵かきザル「スキトオリメ」は、自分が見抜いた真実を臆せず述べる。女王はスキトオリメの答えが気に入り、「毛並みがふさふさしたサルとガイコツ」を描いたスキトオリメの絵に一等賞を与える。
第2景「サルたちの姿と魂」
コンテストのその後について、くすの木が次のように語る。
スキトオリメは、サルの真相を描きつくそうと長い旅に出て、人間が登場したことを知った。一方、森では絵かきザルたちがスキトオリメの絵の真似ばかり描く。女王ザルはガイコツを描くことを禁じる。彼女の心は満足しないままだーー「満足をしないところに 女王の女王らしさがあったのだ」。
第3景「美しい女王ザルの望み」
森に帰ったスキトオリメは、女王ザルに肖像画を描くことを命じられるが、白紙を示して「もうできております」とうそぶく。オトモザルが「なんでもそっくりそのとおりに」描くソノトオリメを呼ぶ。ソノトオリメが描きあげた絵は、似てはいるが「きれいすぎ」て、やはり女王の気に入らない。
再びスキトオリメを召した女王は、「サルデアッテサルデナイものになりたい」と打ち明ける。スキトオリメから、人間や「カミサマ」の存在について知らされた女王は、自分を「永久に死なないサルノカミサマのように」描いてほしい、と懇願する。スキトオリメは再び女王を描こうとするが、どうしても描くことができずに「あすまで待ってください」と猶予をもらう。
第4景「絵かきザルの投獄」
その晩、夢にうなされたスキトオリメは、夢から着想を得て、ついに会心の肖像画を描きあげる。その絵を見たとたん、女王ザルはスキトオリメを牢屋(くすの木の幹の大きなほら穴)へ入れるよう命じる。
第5景「奇怪な絵 ざわめく森」
スキトオリメが描いた絵が、次第に女王の心を追いつめる。折しも、敵対するイヌたちとの戦いが迫る。女王ザルは「サルノカミサマになる」と称し、ソノトオリメが描いた自分そっくりの絵を「おまもり」としてサルたちに与えるよう、オトモザルに命じる。サルたちは、この絵があれば「サルノカミサマ」が「守ってくださる」、「死んでも死なない」と歌う。
第6景「ホラアナの爪あと」
投獄されたスキトオリメの様子と、サルとイヌの戦争について、くすの木が語る。
スキトオリメは、「サルノユーレイの行列」の絵を、牢屋(くすの木の幹のほら穴)の壁に彫るようにして必死に描き続ける。森ではサルとイヌの長い戦争が続く。やがてイヌは人間になつき、サルは武器を持つ人間たちに攻められて形勢不利になってゆく。
第7景「末期の耳」
死を恐れる年老いた女王ザルに、オトモザルは、サルたちが皆おなじ絵をもっていて「若くて美しい女王さまと、いつまでもいっしょの気持」でいる、と言って安心させる。女王ザルは「死んでも死にたくない」と歌い、息絶える。イヌは人間によって森を焼き払わせにかかる。
第8景「炎あれくるう」
逃げ場のなくなったサルたちが、くすの木のほら穴の中に次々と逃げ込む。炎に包まれるサルたちと木の断末魔のすがたを、くすの木と「木のコーラス」が声のかぎりに歌いあげる。
エピローグ「芽生えの肌ざわり」
くすの木は「男」に、自分の木目をよく見るようにうながす。男は「いままで、ぜんぜん見えなかったものが見えてきたぞ」と語り、くすの木は、スキトオリメが描いたものが「男」の胸の中で「おどりだしている」と歌う。(幕)
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オペラ台本「ニホンザル・スキトオリメ」木島始 作