個人稽古が続きます~「くすの木」北川辰彦さん

制作の現場から

オペラ『ニホンザル・スキトオリメ』、オーケストラは先週末も主に第5景以降をじっくりと。一方、歌手の方々の個人音楽稽古は一段落、この後はアンサンブル稽古、合唱のリハーサルと進みます。写真は過日、お稽古が終わられて部屋を出ていらした北川辰彦さん(「くすの木」役)とコレペティトゥール矢田信子さん
「くすの木」は、原作のオペラ化にあたって「この猿達の物語りの証人としての第三者の存在がほしくなり」(作曲家・間宮芳生の言葉)、新たに設けられた、非常に重要な役です。「楠の証言の場と猿たちの葛藤の場がほぼ交替にあらわれるようにして、猿たちを追い込んでゆくという構成をとり、プロローグとエピローグを持つ八景という具体的な構成が出来上った。」というだけあって、最も登場場面の多い役でもあり、バッハ「マタイ受難曲」の福音史家や、ワーグナー「パルジファル」の老騎士・グルネマンツを思い出させます。しかも「くすの木」は、ニホンザル王国の滅亡に巻き込まれて自身の体も焼き尽くされてしまうので、「第三者」とはいえ物語の当事者でもあります。クライマックスの第8景では「わしらは、青い葉っぱをつけたまま、炎の舌さきで、手足をなめるように食いちぎらられ、煙りにむせかえって倒れていく…」と凄惨な場面を合唱(木のコーラス)とともに描き出します。
多彩な魅力と豊かな表現力を備えた北川さんの姿の一端は、昨年までBSフジで放映されていた番組「レシピ・アン」を紹介する二期会ブログ記事からも知ることができます。
http://www.nikikai.net/enjoy/vol293_03.html